春の青空を彩った桜の花も散り
気がつけば5月。

私たちは勉強合宿に来ていた。


あれから田島くんと岡田くんとは
ほとんど話していない。


緑が広がる広大な土地に
ぽつんと大きな白い合宿場。

同じグループとはいえ
田島くんと岡田くんと一緒になるのは
講義やご飯のときに
グループごとに座ったりするくらいで
話す機会はなかった。

やっぱりあの2人はいつも男女問わず
みんなの中心にいて
私はその輪から離れたところから眺めている。

「なーに見惚れてんの?」

突然、美咲に話しかけられ
はっと我に帰る。

「ち、ちがう!見てないし!」

慌てて否定する。

だって私には忘れられない初恋の人がいる。

満点の星空の下で永遠を約束した男の子。

「いつも言ってるじゃん。私には…」

「まーくんでしょ!
満点の星空の下でプロポーズされた。
あいの初恋の王子様‼︎

〝あいはずっーとその人のことが好きだもんね!!〟」

美咲の声が講堂に響き渡る。

「美咲!声が大きい‼︎」

慌てて美咲の口に手を当てる。

「なんの話してるのー?」

岡田くんが楽しそうにこっちに駆け寄って来る。
後に続いて田島くんまで。

「あいの好きな人の話。
ずっと大好きで忘れられないんだって!」

からかうように笑いながら美咲が言うと。

「それってどんなヤツ!?」

いつもクールな田島くんが珍しく大声を出したので驚いた。

「「ほらほら〜。」」

美咲と岡田くんに促され
仕方なく話し始める。

「…小さい頃。
すごく仲が良かった男の子がいたんだけど。

ときどき、どこかの丘に遊びに行ってて
すごい星空が綺麗なところで。

そこでね、ある日言われたの。

〝大人になったら僕と結婚しよう!〟って。

もうその子の名前も覚えてないし
その子もそんな約束なんて忘れてるだろうけど

私はずっとその約束が忘れられなくて…」

恥ずかしさを堪え、
朧げな記憶を辿りながらゆっくりと話した。

「アハハハ、そっか」

突然、田島くんが声を上げて笑う。

『そうだよね。こんな話したら引くよね…。』

恥ずかしくて赤くなっていると。

「いつか、また会えるといいな。
その初恋の人に。」

いつもふざけてみんなを笑わせている岡田くんが見たことないような真剣で優しい顔で言った。

「うん。」

また会えるよね。いつかきっと。


あなたがあの約束を覚えていないとしても
私はずっとあなたを探してる。

…あなたのことを想い続けている。