ケータイ小説 野いちご

身代わり令嬢に終わらない口づけを

第五章 たった一度の口づけ

「誰にも、見つからなかったわよね……」

 角を曲がったところで、ローズは後ろを振り返って安堵の息をついた。

 その服装はベアトリスのドレスではなく、持ってきていたローズ自身の質素な服だ。


 レオンの話を聞いてローズはいてもたってもいられず、こっそりと一人で街へと出てきたのだ。

 街は、祭りの賑わいと人にあふれている。リンドグレーン家のあるファルの街でも、このフィランセの秋祭りは有名だった。ローズの心には、ベアトリスがここに来ている、という確信めいた気持ちがあった。

(自由になったお嬢様が、このお祭りを放っておくわけないもの。あのレオン様が見て私に似ていた、というなら、それはきっとお嬢様に違いない)


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