「はいはーい、席につけー。」

眼鏡をかけた担任が教室に入ってくる。それまでザ
ワザワとしていた室内は一気に緊張感に包まれた。

「ようこそ、竜騎士学園、竜騎士科へ。お前らを六年間担任する黒田だ。お前達を立派な騎士団員にさせる為、全力を尽くす。さて、本題に入ろう。さっそくだが、お前達にプレゼントがある。」

黒田先生が指を鳴らすと床から生徒分の幼獣竜が入ったケースが出てきた。生徒達は一気にざわつき、所々から「あれ、パートナーになるドラゴン達か?」「かわいい」などの声が聞こえる。

それを静止するように黒田先生は手を叩いた。

「はいはい、静かに。この幼獣はお前達の一生のパートナーになるドラゴンだ。属性、性格、好み、すべてが人と同じく個性がある。自分に合ったドラゴンを選べ。まずは神木、お前からだ。」

黒田先生はいきなり緋依を指名した。緋依は驚いた様子で立ち上がり、並ぶ幼獣を見つめる。

「先生、私、この子にします!」

緋依が選んだのはケースの中で毛繕いをしていた綺麗な黄緑色のドラゴンだった。

「回復竜か。なかなかいいセンスをしてるな、神木。」
黒田先生は言うと首輪のようなものをドラゴンの首につけ、緋依に淡く輝く石を渡した。

「これは貴石。ドラゴンと人間を結ぶ大切な石だ。それを壊された場合、ドラゴンは死に至る。お前らパートナーはドラゴンの一生を託されてるんだ。」

黒田先生の言葉を聞くと全員がどよめく。

「なあ、俺達、自分の命だけじゃなくドラゴンの命まで預かるのか?」「あれを壊しただけで死ぬってやばくない?」

それぞれが各々不安そうにした。

そんな中、静かに話を聞いていた天翔は立ち上がり、全員に言い放った。

「お前ら、騎士団に入るんだろ?ドラゴンの命一つ守れないようなやつには騎士団なんか入れないと思うけど。覚悟がないやつは他にいけよ。」

「神原の言う通りだ。覚悟を決めろ、ドラゴンが自分の手に渡った瞬間から命は騎士団に捧げられる。よぉく、肝に銘じておけ!」

二人の言葉に教室内はしんと静まった。

「先生、俺、こいつにします。」

静まり返る中、天翔はケースの前に立ち、真っ赤な体をして小さい体ながらも凛々しく立つドラゴンを指さした。

「そいつはちょっと難アリだぞ。気性が荒くて静止するのに時間がかかる。大丈夫か?」

黒田先生は心配そうに言う。

「少しくらい難あったほうが楽しめます。ので、こいつにします。」

天翔は、赤い竜を抱きあげようとケースに手を入れる。

「あだっ!!!!」

赤い竜は、天翔の手を威嚇し、思い切り噛み付いたのだ。

「だから言ったろ……」

黒田先生は呆れたように言った。

「大丈夫!問題ないっす!初対面だし!!!」

天翔はまた手を入れ、噛みつかれても気にせずドラゴンを抱き上げる。

「ほら!!もう怖くn……」

ドラゴンは噛んでも無駄だと思い、炎を天翔に向かって吹いた。

「あちゃあああ!!!!」

1人と一匹のやりとりを横目に見て、黒田先生は唯月を呼び、ドラゴンを選ばせた。

唯月は自信なさげに黒田先生に言う。

「あの、先生……、僕、自信ないです……。緋依や、天翔みたいにこれっ!って選べなくて……。」

俯いたままモジモジという唯月に黒田先生は肩を叩いて言った。

「自信持て。ドラゴンが不安になる。なら、お前と真逆の性格をしたドラゴンを選んでやる。このケースに入った黄色い竜、種族は雷電竜だ。元気いっぱいなやつだからしっかり面倒見てやれよ。」

ケースから出された雷電竜は唯月の元へ飛び、頬を舐める。

「っ、くすぐったい……僕なんかでいいの?」

唯月の問に雷電竜は嬉しそうに微笑んだ。

「よし、全員にドラゴンが渡った。貴石の保持の仕方は各自に任せるが決して壊すな。いいな。これにて入学式兼パートナー選抜式を終了する。明日から授業が始まる。授業までにドラゴンの名前を決めておくこと。」

黒田先生はそれだけを言うと教材を持ち、教室を後にした。