次の日、自転車で学校へと向かう。
これまで憂うつで仕方なかったのに、不思議なことに心が軽くて、ペダルを漕ぐ足が軽やか。
夏の朝、見慣れた風景の中を勢いよく自転車で駆け抜けた。
あっという間に学校に着き、駐輪場へ自転車を停める。
そして歩き出すと、いきなり気分がどんよりしてきた。
大丈夫、大丈夫だから、頑張れ、わたし。
自分にそう言い聞かせて教室へと向かう。
教室の前にたどり着いた時「あはははははっ」という優里の甲高い笑い声が聞こえてきた。
ドッドッドッドッと、心臓がありえないほど速く動いている。
手にじとりと汗をかき、足が前に進まない。
ここまで来たのに、わたしはまた肝心なところでダメなの……?
逃げるの?
そんなの、嫌だよ。
意を決して教室に足を踏み入れた。
その瞬間、今まで騒がしかった教室の空気がピタッと止んで静まり返る。
今までとはちがった異様な空気が漂い、あちこちから痛いくらいの視線が飛んでくる。
それは、心の奥深いところにグサグサと突き刺さった。
「ね、きたよ」
「よく来れるよねー?」
「優里ちゃんがかわいそう」
「ありえないよ」
ヒソヒソと話す女子たちの声が、まるで凶器のように襲ってくる。
わたしのことを言ってるのは一目瞭然だ。
きっと優里があることないこと自分に都合のいいように言い回ったにちがいない。
大群を味方につけて利用する。それが優里のやり方。
わたしは、そんな優里には負けたくない。