お昼休みを終えて教室に戻ると、優里や女子たちの視線がチクチクと突き刺さった。

「ぷっ。はみ出し者同士、仲良くなっちゃってるんですけど」

優里の言葉にクスクス笑う女子たち。

今日は優里の言葉に輪をかけて大きくする美鈴はいない。

朝から姿が見えないので休みなんだろう。

美鈴が休みだからといっても優里の態度は変わらない。

いったい、わたしたちになんの恨みがあるというんだ。

「お互いの傷を舐め合っちゃってるの? ウケるー!」

菜月は優里の声なんか聞こえていないみたいに、席に着いて次の授業の準備を始める。

菜月はこの状況に慣れているなんて、どうしてそんなふうに思ってしまったんだろう。

こんなふうに陰口を言われることに、慣れるわけなんかないのに。

みんなにクスクス笑われても、これみよがしに心ないことを言われても、必死に聞こえないフリをしてやり過ごしていたにちがいない。

深く傷ついて苦しんできたにちがいない。

ひとりも味方がいない中で、聞こえないフリをすることで、自分を守っていたのかもしれない。

そんな簡単なことにさえ、菜月と同じ立場になってみないと気づかないなんて、わたしって本当にバカだ。

こんな状況の中で堂々としていられる菜月はすごいと思う。