遠野side


女子がどことなくそわそわしている。その理由は明後日のイベント。それは女の子にとって一大イベントであるバレンタイデーだ。
「結衣はチョコ作る?」
「友達に配るのは作るよ」
「男の子には?」
「...作らない」
「えぇー...」
「そういう佳奈は?」
「まぁ私も友チョコだけなんだけどさぁ」
「一緒じゃん」
「えへへ」
本当は先生の顔がチラついていたが作ってくると好きだと言っているように思えて気が引けていた。
「今年も友チョコだけで良いや」
「私もー」
「なになにー?チョコー?」
楽しそうに会話に混ざってきたのは久雅先生。
「先生...」
「あ、先生チョコ欲しい?作ってこようか?」
「んー。好きな子からもらえるの待ってるんだよねぇ」
「え!先生好きな人いるの?」
「さぁ?どうだろうね」
「なにそれー」
笑う佳奈の横で私はドキドキが止まらない。これは私に欲しいと言っているのだろうか?
「私飲み物買ってくる」
「え?結衣?」
勢いよく立ち上がりその場から去る。あのまま居たら私の心臓がもちそうになかった。
「なんで私がドキドキしなきゃいけないのよ」
余裕のある先生の態度が私の余裕を無くさせていた。