ケータイ小説 野いちご

鷲高の王と囲われ司書

ここにいて



タクシーを探すよりも歩いたほうが早そうだったので、少しふらつく矢吹くんを支えつつ、徒歩でうちに到着した。

着くなり、「わりぃけどシャワー貸して」と言うので、浴室に案内して、とりあえずタオルだけ置いておく。
ケンカで倒れこんだりして、血や砂まみれになっていたから、気にしたのかもしれない。

(‥‥こんな荷物一つで、転々としてたのかな)

玄関口に置かれた矢吹くんのリュックを眺めながら、何ともいえない気持ちになる。
具合が悪い時なんて、一番人恋しくなるというか、いたわってほしい時なのに。

一ノ瀬くんに連絡をしたり、スポーツドリンクなんかを用意しているうちに、矢吹くんが浴室から出てきた。


「あ‥‥着替えは持ってたんだね。これ飲む?」

「ん、‥‥わりぃな、色々」

そう言って矢吹くんは飲み物を受けとる。
ペットボトルを飲みながら、矢吹くんは少し珍しそうに、私の部屋を眺めた。


「‥‥急いで片付けた感がすげぇ‥‥」

「うっ‥‥だ、だってここ越してきて2か月で‥‥まだ片付けきれてないの!」


鷲高の近くに越してきて、まだ2か月弱。ある程度は綺麗にしているつもりだけど、まだ片付け切れていない本なんかが、段ボールに入ったままになっているのがちょっと恥ずかしい。


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