「でさ~、今朝もプリンスのお迎えに参加したんだけど、なんっかいつもより更にキラキラして見えてさ〜」



…最悪だ。
あんな男と家が隣で、女アレルギー克服の協力をするなんて。



「昨日も、プリンスが私の作ったお弁当食べてくれてるとこ想像したら、もう興奮して眠れなくなっちゃって!」



てゆーか。あんな無理矢理き、き、キス写真なんて撮って脅すとか…無駄に綺麗な顔に似合わずやり方が汚いんだよっ!!



「…てか一花、話聞いてる?」



しかも、もしかして、もしかしなくても!!

私のっ…ファーストキス、だったんですけど!?!?



「ちょっと一花!パン!メロンパン潰れてるから!!」


「…え?」



ふと気付くと怪訝そうに眉をひそめているみのりと、私の手の中でグシャグシャに潰れたメロンパン。



「っは!?何これ!?」


「何これ、って自分で握り潰したんでしょ…」



今はお昼休み。

はぁ、とため息をついたみのりが綺麗に巻かれた出し巻き卵を箸でつまんで言った。


「何かあったの?なんか今日、朝からずっと様子おかしいけど」

「え?そ、そうかな…」

「そうだよ。なんかイライラしてるっていうか、心ここにあらずっていうか…」



みのりがモグモグ口を動かしながら、じっと私を見つめる。


まるで心の中を見透かすみたいに。



「ちょっ…べ、別に何もないから!ほんとに、何もないから!」



目を合わせると本当に心の中を読まれそうなので、私は慌てて目を逸らしてメロンパンをかじった。