酒、ドラッグ、シンナー、単車、シャコタンのクーペ、暴走、喧嘩、警察、ヤクザ、少女達。クレイジーな皆がひとつの坩堝の中で、ゆっくりと同じ方向に混じり合いながら回っていた。事件ばかりがおこる、が、何も変らない。停滞した淀みは変らぬ模様を描きながらゆっくり、ゆっくりと回り続ける。


1979年、時代は風のように流れた‥。

「まったく危なっかしいったらありゃしない。奴さ、運転しながら単車のシートに手放しで立つんだぜ‥‥そう、直立。手を広げてさ、それで交差点に突っ込んでくんだもの、整理のマッポ笛吹くのも忘れてポカンとしてやがんの。対向車線の車、全車脇見運転さ‥‥」
(ああ、奴の話か‥)
「次に逝くのは奴だな」
「ミユキ知ってるか、そいつ」
「シノブだろ、ろ、う、きゅ、うぅ。ど、う、きゅ、ううー」
(だいぶラリってんな‥)
「オーケー、解かった解かった、同級ね、同級生なのね。お前そろそろ吸うのやめろよ」
「いっやっ!」
(‥‥‥‥)
「自慢のポニーテールもくたびれて‥。アンパンやり過ぎなんだよ大体。前歯なんかボロボロなんじゃないの?ほら危ない、タンベくわえて袋持つな!引火してお前の部屋燃やしただろう」
「っるっさっいっ!!なんらてめぇ」
「‥‥‥‥」
「うーうーうー‥」
ミユキは意味の焦点が非常に不安定な泣き声を上げた。シンナーのせいだ‥。
 宥めることは簡単に諦められる、男は煙草と火を取り上げ部屋を出た。


「シノブ何やってんだ、ギターなんて弾けんのか?」
「去年から持ってんじゃん、曲書いてみようかなー、な~んてね」
「アンパン食うの忙しくてさ、ラリっててそんなこと出来んのかよ」
「ラリってるから良い曲出来るかもよ」
「へーん、どれどれ」
「見るなよ」
「人に見せて、人に聴かせてなんぼだろう。C、Am、F、G7‥なんだこりゃ、エーちゃんの何かと一緒じゃねえの?」
「うるせえよ」