「なあ、アイツ何者だ?」


「サクの妹ちゃん?」



総長は静かに頷く。



「アイツ、全然怖がってないだろ。桜蘭の総長って言っても、何も反応せずに当たり前のように受け入れた」


「マジかよ!」



桜蘭は機密であるよりも最強な暴走族として有名で、驚くなどの反応を示すのは当たり前だ。


──ただし、正体を知っているとなれば別だ。



「ただ単に裏切り者がタレ込んだんじゃない?」



さも助け舟を出すかのように言った及川千尋。


彼の言葉に皆は「それもそうだよね」と納得した。



胸騒ぎ、虫の知らせ、胸のざわつき……


彼らは野生の勘を働かせたのか嫌な予感が止まらなかったようだ。



誰も知らない。


月夜の計画がヒビ割れのように崩れ落ちることを──