それは、そんな不思議な出来事が起きた次の日の事。
『後輩ちゃん』
『う、うわぁ!?
て、あ、先輩、どうかしましたか?』
突然後ろから耳元に声をかけられ、吃驚しつつも私は振り向いた。
『まーた、変な先輩に会った
どうしよ、今度はどんな意地悪されるんだろ?』
『もー!』
(この人はまた…)
『また心を読まれた』
『うーっ』
『先輩の意地悪』
次々と考えていることを即答され、苛立ちさえ感じ始める。
『もー!先輩、用が無いなら冷やかしに来ないでください!』
『じゃ、用が有れば良いんだ?』
意地悪そうに先輩はにこりと笑う。
『あるんですか?』
少しばかり苛立ちの滲んだ、睨みを効かせるような表情で、私は先輩を見上げた。
『有るよ
ほら、これ』
そう言って先輩が差し出してきたのは、私の入っている委員会の当番の紙だった。
『なんで委員会に入っていない先輩が何故私に?って?』
もう怒ることを諦め、私は素直に頷いた。
『クラスの奴から頼まれたんだよ
忙しいけど明日までだから代わりに届けてくれってね
ほら、ここ、俺のクラスの次が君のクラスって書いてある』
先輩の指が指し示す場所を見ると、そこには確かに、先輩のクラスの下に私のクラスが書いてあった。
『そういうこと、またね、分かりやすい後輩ちゃん』
そう言ってにやりと笑うと、先輩は廊下の奥へと姿を消した。
(意地悪なのか親切なのか…
よく分からない先輩だったな…)

その時の私には、そんな先輩でさえ読めない心が有る事をまだ知らない…