『私は…昴くんが好きなの。
ゴメンね…結城。
気持ちは嬉しいけど、答えられない』
私はそう言って、昴くんの手を取る。
『そうかよ…
だが、俺は認めないからな!
だから…ずっと漬け込む機会、狙ってやるよ』
結城は、珍しく少しだけ寂しそうな顔をしてそう言う。
『結城先輩?何言ってるんですか?
俺が先輩を渡すわけないじゃないですか』
そう言って、私が取った彼の手に私の手を引かれて…
『きゃっ!ちょ、昴くんっ!?』
昴くんに抱き締められた。
昴くんの顔は、今までの顔の中で、一番幸せそうで、自信ありげだった。
『へぇー…それで、こいつが喜ぶとでも?』
結城は、そう言って昴くんを挑発する。
『当たり前じゃないですか。
じゃなきゃ、こんなに顔を赤くしませんから』
明らかに、喜んだような意地悪な声で、昴くんがそう言った。
『ちっ…引っ掛かんなかったか』
苛立たしそうに、結城はそう言った。
『当たり前じゃないですか』
と、私を抱き締めたまま昴くんは、もう一度そう言う。
『うぅ…』
何だか恥ずかしくて、私は下を向く。
『先輩…照れた顔は俺だけの物にしたいんで、可愛いですけど、照れないで下さい』
『昴くんっ!?』
私は恥ずかしくて、更に顔を赤くした。
『まぁ…相手に不足はない方が良いからな…
面白いじゃねーか…俺は直ぐにこいつを俺の物にするからな』
結城は昴くんにそう、宣言する。
『そーですかー…
まぁ、先輩は俺の物なので、二人で帰ります。
邪魔なのでどっか行って下さい』
そう言って、優しく昴くんは私の手を引いて、今居た二年生の下駄箱から見えない、一年生の下駄箱へと向かわされる。
『ご、ゴメンっ!!』
それだけ結城に私は叫んで黙って連れていかれる事にした。
そして…
『先輩…俺、もう、先輩の事…
離せませんからね?』
そう言う昴くんの姿は年上に見える程に格好良かったのは、私だけの秘密。