『私は…結城が好きなの。
ゴメンね…昴くん。
気持ちは嬉しいけど、答えられない』
私はそう言って、結城の手を取る。
『そう…ですか…
分かりましたよ…でも…
いつも、漬け込む機会、狙ってますからね?』
昴くんは、少しだけ寂しそうな顔をしてそう言う。
『はぁ?お前なんかにこいつは渡さねぇーよ』
そう言って、私が取った彼の手に私の手を引かれて…
『わっ!ちょ、結城!?』
結城に抱き締められた。
結城の顔は、今までの顔の中で、一番ニヤついていて、自信ありげだった。
『結城先輩の欠点1、強引な所っと…』
昴くんは、そう、スマホにメモする。
『おい?何をしてるだ?』
明らかに、闇を含んだ声で、結城がそう言った。
『漬け込む隙をメモしてるんですよー?
セ・ン・パ・イ?』
そんな事も分からないのかと、挑発するように昴くんは結城を上目遣いで見る。
『漬け込む隙何てねぇーよ。
そもそも、俺の強引な所も好きなんだよなぁ?』
と、私を上から抱き締めたまま見てくる。
『うぅ…』
何だか恥ずかしくて、私は視線を反らす。
『お、先輩の照れ顔ゲットー!』
と、昴くんは両手の人差し指と親指で枠を作りながらそう言う。
『ちょ、昴くんっ!?』
私は恥ずかしくて、更に顔を赤くした。
『俺の彼女をじろじろ見てんじゃねぇーよ!』
結城は昴くんを怒鳴る。
『結城先輩の欠点2、直ぐ怒鳴る…っと』
そう言って、昴くんは又、スマホにメモをする。
『は?何メモしてんだよお前っ!!
こんなに俺のせいで顔赤くしてるこいつ見てもまだ分からないのかよ!!
あーも!めんどい…
帰るぞ』
そう言って、強引に結城が私の手を引いて、今居た一年生の下駄箱から見えない、二年生の下駄箱へと向かわされる。
『ご、ゴメンねー!!』
それだけ昴くんに私は叫んで黙って連れていかれる事にした。
そして二年生の下駄箱に着くと…
『ドンッ!!』
『ひゃっ!?』
『俺以外の男に優しくしてんじゃねーよ』
いわゆる壁ドンをしながら、結城がそう言う。
『ごめん…なさい』
何故か、結城には、逆らえない。
『分かれば良いんだ』
そう言って、結城は、口を私の口に押し付けた。
『チュッ…』
『帰るぞバカ』
そう言って、先にスタスタと外に出て行った結城の耳が、後ろから見たら、真っ赤だったのは、結城と私だけの秘密。