ケータイ小説 野いちご

元彼課長 ー さよならの続き ー

プロローグ

ふわりと吹く風で、花びらがひらひらと舞い落ちる。
遠くから見ると白いのに、近くで見るとピンク色なのはなぜだろう。
そんな小さな疑問すら、美しい花の前ではすぐに消えてどうでもよくなってしまう。

都会に佇む大きな桜の木。
それを見上げながら、春の訪れに季節の移り変わりの早さを実感する。

隣には彼がいた。
「ちょっと歩こうか」
珍しく彼がそう言ってここまで来た。
だけど、同じように桜の枝を見上げる彼の横顔は、笑顔じゃない。
何か別のことを考えているように見えた。

「…航平?」

不安になって思わず声をかけた。
驚く様子もなく、ゆっくりこっちを向いた彼は、表情のないまま私を見つめた————…








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