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 大型連休が明けたある日の放課後、私はいつもと同じく、教室でお兄ちゃんを待っていた。直哉君と、お互いに旅行したイタリアとスペインの話をしながら。私は家族でイタリアへ行ったのだけど、特にローマでは歴史の壮大さに圧倒され、興奮気味に話してしまった。

「村山さん、誰か来てるわよ?」

 クラスの女子から言われ、私は戸口の方を見た。お兄ちゃんが来たと思ったけど、だったら”誰か”って変だなと思いながら。すると、見た事もない男子が立っていた。私に視線を向けて。

「あの、村山先輩が下で待ってるそうです」

 お兄ちゃんったら、下級生を伝言に使うなんて、ずいぶんね。あの人らしいと、言えなくもないけれど。

 私は鞄を持ち、直哉君に挨拶して教室を出た。なぜか私を呼びに来た、たぶん2年の男子が廊下で私を待っていて、何となく一緒に階段を降りて行った。

 でも、見渡した限りお兄ちゃんの姿はなく、首を傾げていたら、

「こっちです」

 と、その男子に言われ、私は彼について行った。

 中庭に出て、更に体育館の入口の前まで行ったところで、その男子は立ち止まった。でも、お兄ちゃんはその辺にもいなくて、その男子もお兄ちゃんを探しているらしく、周りをキョロキョロ見ていたのだけど……

「きゃっ」

 いきなりその男子に腕を引かれ、私は体育館の中に入れられてしまった。