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「幸子、そろそろ着替えないと、お夕飯に遅れたら大変よ」

 と母は言ったのだけど、着替えと夕飯の因果関係が私には今ひとつ理解出来なかった。

「なんで着替えないといけないの? 第一、わざわざ着替えるような服は持ってないし」

 私はそう言いながら、お兄ちゃんに"貧乏たらしい服装"って言われたのを思い出し、悔しくて涙が出そうになった。

「あら、幸子は聞いてないの? っていうか、見てないの? 幸久さんが、お洋服をたくさん用意してくださってるはずよ?」

「え? うそ?」

「私もたくさん戴いちゃって、もう、びっくりよ」

 そう言いながら母は、収納の扉を開けたのだけど……

「うわあー」

 私のと思われる色取り取りの服が、びっしり並んで吊るされていた。服だけでなく、靴や、バッグなんかもいっぱいあって、お店屋さんみたい。

「なんでも、今夜はいつもより少し豪華な食事になるそうだから、しっかり着飾りなさいって言われたの」

「そうなんだあ。お父さん、ずいぶん気を使ってくれてるんだね?」

「今まで、何もしてやれなかったからって……」

 そう言って母は涙ぐみ、私まで泣きそうになったのだけど、

「お母さんも着替えないと!」

「あら、そうね。急がなくっちゃ。また後でね?」