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 季節は春。俺は自室で、明日から始まる新学期に向け、新しい教科書に目を通していた。ただし、少しも頭に入っては来なかったのだが。

「お坊ちゃま。旦那様がお帰りになりました」

 開け放した部屋の入口に現れた白髪の老人は、この村山家に古くから仕えてくれている執事で、俺は”爺や”と呼んでいる。

「うん、わかった。あのさ、そろそろ”お坊ちゃま”と呼ぶのはやめてくれないかな?」

「そうですか。では、”真一様”とお呼びしますか?」

「ん……そうだね。そうして?」

「かしこまりました」

 さてと。拝みに行くとするか。”招かねざる客”を。