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幻想詩『最果ての城の姫』

『漆黒の真紅 或いは夢見る男の狂愛』

いつから此処にこうして在るのか覚えていない
いつからこの女に傅(かしづき)き、この腕を、この暗黒の剣を以って守り続けているのか記憶にない

我に有るのはこの女への忠誠と全き隷従(れいじゅう)
いつ如何なる刻も付き従い、いつ如何なる処にも付き従う

影のように
風のように
死のように
女に近づくあらゆる者を切り裂き、辱め、跡形もなく消滅させる

我の名は?
覚えていない
我は誰ぞ?
記憶にない

在るのはこの女を抱いた記憶
その白き肌が恥じらいの朱に染まり、柔らかな熱い身体をこの腕にかき抱いて、思いのたけを込めた愛の印を女の中に注いだ

しかしそれは何時のことか?
つい昨日のようでもあり、永劫の彼方の思い出のようでもあり、いつか見た夢の中の出来事のようでもある

もしかしたら、未だ夢を見ているのかもしれない
しかし我を焦がす情欲の炎は、この身を覆う漆黒の鎧に吸い取られ、決して表に現れることはない
我が胸で燃え盛る紅蓮の焔を知る者は誰もいない

我が在るのはこの女のため
この女を守るが我の定め
緋色の想いを漆黒で隠し、暗黒の剣を振るい敵を朱に染める

今日も
明日も
幾星霜の時を超え
未来永劫、殺戮の愛を捧げ
たとえ時が果てようとも
この女が在るかぎり
我も此処に在る


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