「ただいま。」


私が夜の9時近くになって、帰宅すると、夫も既に帰って来ていた。


「お帰り。」


私が居間に入ると、夫はチラリとこちらに視線を向けたけど、すぐにテレビに視線を戻す。


「遅くなってごめんね。夕飯、まだでしょ?」


「ああ。」


「じゃ、すぐ用意するから。」


出勤する前に、ある程度下ごしらえをしてあるから、時間はそんなにはかからない。夫もそれがわかっているから、軽く頷くだけ。ごひいきチ-ムのナイタ-中継が、佳境に入り、そちらの方が、今の夫には重大事のようだ。


いつものこととは言え、そんな夫の態度に、内心ため息をつきながら、私はキッチンに入る。


(ねぇ、確かに仕事は忙しいし、私も4年目に入って、ある程度のポジションを任されてることは嘘じゃない。でも所詮はパ-トの私が、正社員の管理職である、あなたより遅く帰って来てるんだよ。そのことについてあなたは、何も思わないの?もう私には、何の興味もないの?)


私はまた、ため息をついた。