「うわぁー…すっごーいー……!」



そう新條が、見上げたままキラキラとした目で見つめているのは、海賊船をイメージした遊覧船。
なんとなく、その遊覧船にまで嫉妬してしまいそうなオレは、少しだけ苦笑を浮かべてタバコに火をつけた。
初めての団体旅行でもないのに、朝からはしゃぎまくりな新條…。
ねぇ、ちゃんとオレが隣にいること、分かってる?




何気にくじ運のいい藤原ちゃんが、生徒会の買出しの際に貰った福引券で、なんと会員制のホテルの割引宿泊券が手に入った。
大勢で行けば行くほど安くなるというヤツ。
バスが到着したのは、テニスコートやプールまで付いている豪華なホテル。
新條は降りた途端に、声を掛ける間もなくオレの傍から離れて行って。
その姿を目で追っていけば、一緒にやってきた田浦や中谷ちゃんに向かってこれでもかってなくらい、可愛らしい笑みを振りまいてくれちゃってる。



…なんか…ちょっと寂しい、かなぁ、なんて。