そして週明けの月曜日。

今日も学校で色々な人たちに鬼頭朔也の妹として扱われたけど、前みたいに憂鬱な気持ちにはならなかった。



振り返れば、お兄ちゃんの喧嘩が強くなってしまった原因は私にある。


昔から自分の意見を主張するのが苦手で、イヤなことも断れない性格をしてた。

そのせいで〝利用しやすい子〟という印象を持たれてしまい同級生からかわれていた。そんな私を守ってくれたのは……。



『なにしてんだよ、てめえっ!!』

いつだってお兄ちゃんだった。



だからこそ、私はお兄ちゃんがずっと傍にいてくれることを当たり前に思ってた。


思春期を迎えて、私より友達といるほうが多くなって。知らないことが増えて、なにを話せばいいか分からなくなって。


不良なんてキライ。不良になったお兄ちゃんなんて大嫌いだと思うことで、離れていく寂しさを誤魔化していた。


でも、お兄ちゃんは離れていったわけじゃない。

私は、私は……。




「キミに恨みはないけど、ごめんね」


と、次の瞬間。歩き慣れているはずの道の物陰から複数の男たちが出てきた。


そして大声を叫ぶ暇もなく私は口を塞がれて、なにやら鼻にツンとした刺激臭が通り抜ける。



な、なに、誰……?


気持ち悪い。頭がグラグラしてる。

意識が遠くなっていく中で、男たちの薄ら笑いだけがぼんやりと瞳に映っていた。