⦅まずは石室澪さんの大切なものを見て行きましょう!⦆


その声と同時に、穴の中からテーブルがせり上がって来る。


テーブルの上に乗っているものには、見覚えがあり、同時になつかしさが込み上げてきた。


「ウサギのぬいぐるみ……?」


そう呟いたのは理恵だった。


「うん。幼稚園の頃からずっと持ってる」


あたしは理恵へ向けてそう答えた。


確かにこのぬいぐるみはあたしにとって大切なものだ。


幼稚園に通っている頃、父方の祖母に無理を言って買ってもらったものなのだ。


母からはやめなさいと言われたけれど、あたしはその場で駄々をこねてどうしても欲しいと言って譲らなかった。


その時の記憶は今でもハッキリ覚えている。


祖母の優しい笑顔、ぬいぐるみを購入して手渡してくれた時のシワシワの手。


その手で祖母はあたしの頭を何度も撫でてくれたものだ。