午前中、空き教室でセリフを覚えていると、俊和が入っていた。


その手にはあたしと同じ台本が握られている。


パートナーと一緒に練習した方がいいのはわかってる。


けれど、祐里と麻由子の前でそんなことはできるはずがなかった。


「一緒に練習しよう」


そう言って近づいてくる俊和。


古い椅子に腰をかけたあたしはジッと俊和を見つめた。


「さっきの、嘘でしょ?」


「さっきのって?」


そう聞きながら、自分で椅子を用意してあたしの隣に座る。


「物音が聞こえたって言うの」


「どうして嘘だと思ったんだよ?」


「なんとなく、挙動不審に見えたから」


そう言うと、俊和は口角を上げて笑った。


学年で1位2位を争うイケメンだと言われている通り、その笑顔はあたしでも引き付けられるものがあった。