それからどれだけ孝利を説得しても、聞き入れてもらえることはなかった。


「なんであたしなの?」


そう聞くと「元々色目を使ってるヤツらなんか使い物にならないだろ。これは悲恋なんだ。苦痛を顔に出せないとダメなんだ」と、孝利は言った。


祐里や麻由子が相手だと、幸せが表情に出てしまうことを懸念しているのだ。


それは理解できても、これから10日間もこんな状態で合宿をするのかと思うと、気が滅入った。


午後になり、1時間の休憩後試写会室に集まると、孝利がすでに台本を用意してきていた。


昨日の間にできる限り進めておいた結果だった。


その熱意を見せられると、もう文句は言えなかった。