「……………」



お母さんと私で、何度もつっかえながら、何度も涙を堪えながら、何度も声を震えさせながら、そして結局は泣きながら。


お父さんにまつわる全てを、キムさんに伝え終わった後。


私達の涙が伝染してしまったらしく、キムさんは目の辺りを擦りながら黙り込んでしまった。



「…あの、…ごめんなさい。本当はもう少しオブラートに包みたかったんですけど、話し始めたら止まらなくて…」


私は、テーブルに落ちた自分の涙を袖で拭きながら、小声でそっとキムさんに謝った。


5時過ぎに話し始めたはずなのに、時刻はもう6時を過ぎていた。


「……待って瀬奈、あいつのせいで火傷したの?」


キムさんの隣で、ティッシュを目に当てて涙を吸い取っていたお母さんが、目を丸くして尋ねてきた。


何故か、前のお父さんの呼び方が“あいつ”に変わっている。


「え?…うん。ライターを直に当てられたし、あと熱湯も掛けられたよ…?」


当たり前の様に答える私に、眉間を片手でつまんで軽く俯いていたキムさんが、驚いて顔を上げた。


「ライター……」


その呟きは誰からも同意される事なく、吐いた息と共に溶けて消えた。


「嘘!えっ、どこを火傷したの?お母さん、知らなかった…」