私は、幼い頃から超が付く程のお父さんっ子だった。


何をするにもお父さんの真似をして、お父さんの職場でお父さんと同じ事をしたくて、家で泣き喚いた事もある。


“散歩”という名目で2人でポテトを買いに行って食べたり、暗くて街灯の光が当たらない木々の中を、お化け屋敷だと仮定して歩き回ったり。


お父さんは私がねだったものは値段が高くない限りほとんど買ってくれたし、だから私は買って貰ったものを大切に使っていた。


朝早くに起こして遊んだ事も数え切れない程あるし、夜遅くまで一緒に起きてテレビを見ていた事もある。


いつもお父さんは笑顔で、お父さんに怒られた事もほとんど無くて、お父さんと居たらいつも楽しくて。


家族皆、笑いが絶えなかった。




けれど。


事の始まりは、今から8年前の、小学1年生のある日。


その日に、私とお父さんの楽しかった日々は終わりを告げる事になる。



「瀬奈、お茶」


「うん、分かった!」


お母さんは買い物に行っていて、お父さんは仕事が休みで家に居た。


お父さんとほぼ1日中一緒に居れる、最高の日。


あの頃の私は、お父さんの力になれる事が嬉しかった。


私にとっては、お父さんのお手伝いが出来ることが純粋に嬉しくて。


だからあの日も、私はいつも通りお父さんの為にお茶を渡そうと、冷蔵庫へ向かった。