「はーい着いたよ瀬奈ちゃん起きてー!起きて起きて起きてー」


何処からか、トユンさんの明るい声が聞こえる。


「んっ、………」


磁石の様にくっ付いた瞼を擦りながら目を開けると、ぼやけた視界の先にはトユンさんと山口さんが居た。


「その様子を見ると、良く眠れたようですね」


優しく笑う山口さんに笑みを返しながら、私は欠伸をひとつする。


「瀬奈ちゃんマジ爆睡してたよ。どれだけ寝てなかったの?ってくらい意識飛んでた」


私の欠伸が移ったのか、彼は黒いマスク越しでも分かる程口を開けながらそう言ってきて。


「え、私そんなに寝てたんですか?…あ、もう着いたんですか?」


反射的にトユンさんの目から顔を背けながら私がそう尋ねると、2人は大きく何度も頷いた。


「本当は15分程前にマンションの前に到着していたのですが、瀬奈様が余りにも気持ちよく寝ておられたので、しばらく起こさないでおいたのですよ」


「寝顔可愛かったー、写真撮っとけば良かった。…え、俺変態じゃないから引かないで?俺もさっき少し寝ちゃったし」


そう言って目配せし合い、微笑ましそうに笑う2人の姿から、どれ程私が爆睡していたか想像がつく。