「瀬奈起きてー、朝だよー…って、あれ、おはよう」


朝の6時。


余裕を持って私を起こしに来たお母さんが、今日の時間割の準備をしていた私を見て目を見開いた。


「瀬奈、何だかこの頃起きるの早くない?」


「おはよう。…ん?気分だよ気分」


お母さんの来る直前に欠伸をしていた私は、涙目のまま後ろを振り返って笑った。



何が“気分”だ。


あの後、結局お父さん関連の夢を見てしまうのではないかと怖くなった私は眠る事が出来ずに、目を瞑っては開き、目を瞑っては開き…を繰り返し続けていたのだ。


外からは何の音も聞こえない深夜、毛布と枕を抱き締めながら震え続けていた私の気持ちを想像してもらいたい。


私はただでさえ少し怖がりなのに、しかも深夜だから幽霊とかそういう類の事も考えてしまうのに、それに加えて幽霊よりも恐ろしいお父さんの事を考えては止まらなくなっていて。


しかも、昨日からの寝不足がほとんど取れていないから、朝っぱらから欠伸が止まらない。



「まあ早起きは三文の徳って言うからね…。そんな事より、今日引っ越しするらしいからまた部活休んでね」


今日で引っ越しが終わる訳無いと思うから、今週は部活休んでね。…それにしても急過ぎだよね?まあ良いんだけど、と、お母さんはぶつぶつと不満を漏らしながらリビングの方へ言ってしまった。