ケータイ小説 野いちご

幸福論

第1章 これは仕事
〜まこ〜

高くそびえるビルには大きな看板。

大きく揺らぐ葉っぱはまるで人工物のように青々としていて。

道ゆく人々には笑顔なんてちっともなくて。




六年前、東京に引っ越してきた私は今年で28歳になった。




私の名前は新藤まこ(しんどう まこ)



東京という地に憧れ続けた中学時代。
修学旅行で訪れたテレビ局にみんなで大騒ぎしたっけ。


大学はこっちで受けるんだと思っていた高校時代。
親の反対であっさり諦めたよね。


就職こそはと東京でしか就活をしなかった。


遮るものは何もなくて、
案外すっきり決まった東京での暮らし。
やっと手に入れた東京での生活。


全てが新鮮だった。


新しい家に新しい家具、家電。
新しい生活にはワクワクの色しか見えなくて。

あの頃は何をしても楽しかったっけ。

今思うと、私の青春はこの六年間に全て詰まっていたんじゃないかな。





「......い。まこ?」

「あ、ごめん。色々思い出してた。」





一つ一つを丁寧に思い出していく。

瞼を持ち上げると、心配そうに眉を下げ、
私の顔を覗き込む人。


思いがけずその目は潤んでいるようで。
そっと握られた手に、また目を閉じた。



これはそんな私の6年間のお話。


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