それから2ヶ月ほど経ち、五月の上旬頃。
「お嬢様、朝でございます」
毎朝、同じ時間に拓人は起こしに来てくれる。
私は拓人の声で目を覚まし、体を起こす。
「本日の気分はいかがでしょうか」
「……パンが食べたい」
きっと、そういう意味で聞いてきたわけじゃないのだろうけれど、寝ぼけていた私は、つい今食べたいものを言ってしまった。
「……かしこまりました」
そんな私の回答を聞いて、拓人は小さく笑って返事をした。
それが恥ずかしくて、思わず顔が熱くなり、視線をそらす。
「それではお嬢様、着替えましょうか。
私は外でお待ちしております」
朝起きると、私は先に制服へと着替える。
だけど私だけで、拓人はまだ着替えない。