僕が施設に入れられたのは
八歳の春だった。

母親が亡くなって
三年はどうにか
育てていた父親も
新しい恋人ができると
僕をほったらかしにした。

唯一よかった点は
キッチンを使えたこと、お金をいくらか
置いてってくれたこと、
母親がレシピノートを
残してくれたことだった。

施設に入れられた時の
僕の持ち物は多少の着替えと
そのレシピノートだけだった。

十年間お世話になった
施設を出て、大学に通い
教師になり、そして
冬也と出会った。

友人から恋人になり
そして今、家族になった。

家族がいなかった僕に
二人の義弟 (おとうと)
(うち一人は恋人でもあるけど)と
優しい義父(ちち)ができた。