明日香たちがシステインに帰り着いて一か月後には、グアニジムから人質が送られてきた。結局、システインの国力を見せつけられたグアニジムは、配下になることを決めたのである。

「しかし、戦乱というものは限りがない」

 ジェイルが言った。

「そうよねえ。信長が登場して秀吉が天下統一、家康が徳川幕府を開くまで、何十年もかかったんだもの。天下統一って、簡単じゃないわよねえ」

 今さらなことを言う明日香の言葉に、周囲の人間は首を傾げた。しかし今では、明日香がこの世界にそぐわない不思議発言をしたとしても、『まあこのひとは異世界から来たんだし』でスルーされるようになっていた。

(ああ、そろそろ神社仏閣城郭巡りがしたくなってきた……)

 ずっと異世界にいると、不思議と嫌いだった元の世界が恋しくなってくる。明日香は史跡や、かつおだしを使った日本料理のことを思い出しては、時々切なくなるのだった。

 そんなある日。

「おい! そういえば、結婚はどうするんだ!」

 夕食の席で、ジェイルがいきなり立ち上がった。明日香や侍女たちは驚いて彼を見上げた。

(しまった、また忘れてた……)

 戦後は色々とやることが多い。アミノ国への支援やグアニジムの人質を受け入れる準備など。宰相のバックスは寝る暇もなく働いている。

 明日香もあっちこっちに引っ張り出され、ビアンカにも帰ってから数回しか会えていない。