次の日から、明日香は城じゅうを歩き回った。

(まずこの国のことを把握しなくては)

 時間が許す限り城から足を伸ばし、地図を片手に周辺の地理を把握しようと努める。その結果、システインは温暖な気候であり、大体の縮尺で計算すると、広さはドイツくらいということが分かった。

 そもそもここは異世界というわりに、元の世界と似通ったところが多い。

 日本の妖怪のように、ドラゴンやモンスターといった伝説の生き物は信じられているが、ゲームに出てくるような、魔王やエルフやドワーフといった人間と別の種族はいない。となると、魔法などといった明日香の手には負えないような戦い方もないわけで。

(よし、とりかかりますか)

 まず、敵に攻められていないこの時期に、国の備えを見直すことにした。

「ジェイル、この国で一番交易が栄えている場所はどこ?」

「そりゃあ南端の港だろう」

 港には、友好国の船や、遠く離れた大陸からの交易船がやってくるという。

「そこへ行きたいんだけど」

 ジェイルは少し考え、結局城をペーターに預け、明日香に同行することにした。もちろん、親衛隊付きで。

 ジェイルと明日香が乗った馬車の前後を親衛隊が守る。途中、それぞれの領地を治める貴族の城で寝泊まりしながら五日後、一行は港に辿り着いた。