「うわあ……!」

 深い森を抜けると、急に視界が開けた。火が放たれた街と同じような、三角屋根の白っぽい建物が並ぶ。しかしその数は、比較にならないくらい多かった。

 教会らしき建物、鐘楼、時計台……観光地みたいな街の向こうに、また山が見える。

 そこにでんと構える巨大な城。ところどころ、天に伸びる鉛筆のように尖っている。

 まるで映画にでてくる西洋風の城に、明日香の心は高揚した。一番好きなのはもちろん日本の城郭だが、西洋の城も一度現物を見たいと思っていた。

 一行は街を抜け、城に入るためにまた山を登り始めた。道はレンガみたいなもので舗装されている。

「意外に遠かった……」

 馬から降りた明日香はふらふらとジェイルに寄りかかった。

 それもそのはず、ジェイルたちが住んでいた山から王城まで、丸三日もかかったのだ。新幹線も飛行機もない世界を、明日香は憎んだ。

「でも、すごい!」

 間近で見る白い石造りの城は、明日香の疲れを癒してくれる。

 高い城壁に開いている小さな穴は、その隙間から矢や銃を打つための狭間に違いない。日本の城との共通点を見つけ、密かに明日香のテンションは上がった。

「ささ、早く国王陛下の元へ」