惚れっぽい体質だということは今までの人生で割と自覚してきたつもりだった。

自分のことを好きだと言ってくれる女の子がいれば、
あ、僕も好きかもしれない。と。
ありもしない恋愛感情を抱きがちだ。


ただし、惚れっぽい体質だと言うことを加味しても今回の恋は好きすぎだ。
と、目の前の薫がコーヒーを飲む姿を見て思う。

少し明るい色に染めたベリーショートの髪を右に分けて、
意志の強そうなスッキリとした顎のラインと眉、大きく黒い瞳が印象的だ。
僕がプレゼントした青みがかったピンクの口紅の色が白い肌に似合う。
更に高身長でスタイルもいいんだから彼女はきっとモテるに違いないと確信していた。
僕とは正反対で真面目な人生を常に送ってきたのだろうと簡単に予測がついた。

あまり彼女は自分のことを多くは語らないが
とんでもなく頭がキレるのは会話をしててすぐにわかる。

コーヒーを置いた彼女に好きだと伝える。
もう何回目だろう。
初めて伝えてから1ヶ月がたっている。

僕は基本的に
相手も自分のことが好きだと確信してから告白したいという狡い男であるが

ただ、今回は我慢できなかった。
普通に話しをして普通に笑う。知れば知るほど熱い気持ちが膨らむ。
その普通の薫が好きになってしまった。

だから2回目のデートで好きだと伝えてしまい
そこからは何のことはない、気持ちに歯止めが効かなくなった。

なんでもない時に思い出し今は何をしているだろうかと想像して
彼女が好きな音楽を聴いて、映画を見て、僕もそれらが好きだと思う。
その映画が好きなのか、それとも彼女のことが好きなのか。
僕にとってそれは難問であったけれど別に答えは必要なかった。


とにかく日を増すごとに好きになり
もはや彼女とたまに会って話ができるだけでとても幸せだ。


「今度はもう少しデートっぽいデートをしよう」

「じゃあ、ドライブに連れてって」

「もちろん」

彼女は本当に?と上ずった声をあげたあと、今日で一番嬉しそうにありがとうと言った。

「海がいい、青くて綺麗な海がいいから、少し遠くまで連れて行って」

「僕は夜景が見たいけど」

「じゃあ、夜は夜景。夕方は海。」

「そんなスポットが近くにあるのか?」

「知らない。探してね」

彼女はなかなかの難題を僕に押し付けるけれど
僕はもちろんいいよ、と快諾してしまう。
きっと僕が断れないことも知ってるんだ。

そんな君のことが大好きだ。


ーーーーうっかり勇気を出しちゃって、言ってしまった愛の言葉