8月の蒸し暑いある日、
俺は遅い「冬休み」を利用して、付き合って3年目、同棲して8ヶ月の恋人レナさんと海沿いの宿に泊まりで遊びに向かっている所だ。

「海だー!来たきたきたぁー!!」

すっかりテンションが上がったレナさんは、白い軽自動車の助手席の窓から外に向かって叫んだ。

「こら、レナさん!腕出したら危ないって!」

運転する俺の心配をよそに、レナさんは長い巻き髪を風に靡かせ歌まで歌い出す。まさに、夏女だ。

「レナさん歌うまーい!!」
「青山、後どれ位で着くんだ?」

ちなみにちゃっかり、後部座席には親友の廣瀬とその嫁のゆめちゃんも乗っている…。

「宿まで10分!ほら、レナさん!お座り!」

彼女の細い腕を引き寄せるとようやく落ち着いたが、待ちきれなさそうに宿に着くまで揺れていた。

俺はアクセルを踏み込んで少しだけ加速し、
やがて海沿いの温泉宿、「湯海」-ユカイ-の駐車場に車を停めた。

「遥斗、運転お疲れ様!」

レナさんは労いのキスを頬にしてくれたので、
さっきの軽いヤンチャ騒ぎは許す事にした。

「全く、しょうがないなぁ。」

なんて言うと廣瀬が俺の肩に腕を回してきた。

「折角の夏休みなんだし、青山ももっと解放されなよ!」

「まぁ…そうだね。チェックインは夕方の16時からだし、海で泳ごっか!」

そう言うと3人とも学生の頃と変わらないテンションで「いぇーい!」と腕を挙げた。