梅雨は明け、季節が移ろってゆく余韻に浸る間もなく、暑い夏が来ている。

短い生命を精一杯に生きる蝉の鳴く声は五月蝿いはずなのに、ある少女の耳には届かずに虚しく響く。

「サヨナラ……」

夕焼けにそう告げた少女は
学校の屋上から飛び降りた…。

鈍い音が地面に響き、
不思議に思った女性教師が気づいた頃には、
頭と制服が真っ赤に染まっていた…。

スカートのポケットからは
真新しい真っ白な紙切れが1枚、
読んでほしそうにはみ出している…。