あまりにも短い面接の終了にちえりは画期的な黒線の数をかぞえることで悲壮感をやり過ごすことにした。

(八本、九本……あぁ……あそこで分かれてる。根本はひとつだから十? でもあれも一応毛の束だべな(だろうな)……)

 この面接で得られたことと言えば、専務の●゙ーコードが十五本あると判明したくらいのものだろう。
 やがて退室を促され、ちえりはこれから面接だと思われるヤングたちを横目に見ながら逃げるように廊下を走った。

「お前さ、あ……ちょっと待て! おいっ!」

 誰かに制止を求められた気もするが、それどころじゃない。
 いまは一刻も早く消えてしまいたかった。すると――

「こぉらーっ! 廊下ば走んなーーっっっ(廊下を走るな)!!」

 聞き覚えのある東北訛りの男性の声。
 そしてどことなく安堵感のある王子様ボイスにちえりが振り向くと――

「……っ瑞貴センパイ!?」

「え……? あれ? チェリー……?」

 そこには真琴の兄である茶系にサラサラ短髪の桜田瑞貴(さくらだみずき)が立っており、彼の胸には"リーダー"と刻まれたプレートが光を放っていた。