一時限目が始まるチャイムを聞きながら、私は立ち尽くす新城の背中を見つめる。



一月ということで、冷たい空気が頬を撫でる。


ズボンのポケットから手が出せない。



「お前」



沈黙を先に破ったのは、新城だった。



「どうして咲乃を知っている」

「咲乃は……後輩だ」



嘘はついていない。


ただそのような関係だと言い切ってしまうことに抵抗があった。



かといって、咲乃が私の天使だと場違いとも思えるようなことは言わない。



「……新城は、咲乃の彼氏だったのだろう?」

「咲乃に聞いたのか……」



私たちの会話は静かに続けられる。



新城はゆっくりと柵のほうに歩いていく。



「あんたは咲乃がどうやって死んだか知っているか?」



私はその背中に質問を投げる。



「どっかの歩道橋の階段から転落したってことしか知らない」



新城の表情は見えないが、嘘をついているようには思わなかった。


そもそも、ここで嘘をつく理由がないだろうが。



「警察には俺たちの誰かが落としたんじゃって散々疑われた」

「でも、やっていないんだろ?」



思わず出た言葉で、私自身驚いた。



新城は振り向いた。