「眠い……今日のごはんなにー……?」
「ん、何って、難しいわね。いろいろよ。ほうれん草のおひたしでしょ、小鉢はーあっイクラね! エビとイクラとアボカド和え、高野豆腐と、焼き魚と、赤かぶのお漬物、それからおみそ汁とー、あと白米~っ。あちちっ、あふ、炊き立てに間に合ったわね!」
「ふあ~あ。ああ、まだ暗いな……農家の朝ってこんな感じなのかな……」
「農家ねえ……」

 そんなのがいたらの話だが。

 律歌は炊き立て白米を咀嚼しながら、これはいったい誰が作ったのだろうかと思いをはせた。

 そしてここはどこなの? と。

 席に着いて「いただきます」と箸を取る北寺。彼も少し前、仕事を早退した帰りに、昼下がりの街をふらふらと歩いていたところ、ここに自然とたどり着いたという。

 この辺りに住むほかの住人も同じようなものだ。

“迷い込んできた ”

 全員口をそろえてそう言う。

 最近でも、迷い込んでくる人が時々現れる。ふと思い出して律歌は聞いた。

「ねえ、こないだのあの新しい人、どうなったかな?」