書き足された地図を見ながら、律歌と北寺は迂回しながらさらに北へ進んでいく。しばらく行くと、なんだか妙な臭いが充満しているのに気付いた。

「なんだろう。工事現場みたいなにおいがする」

 律歌は顔をしかめた。

 そして、言われていた犬山宅周辺にたどり着いた瞬間、最後のアドバイスの理由が簡単にわかった。一軒家の犬山宅のひらけた庭には墨汁を大量にひっくり返したようなよくわからない光景が広がっていたのだ。

「わあ。びっくり」

 その墨のように黒い液体は、油のようにどろりとしていて、しかもまだ広がりつつあるようだった。

「これは……」

 北寺が自転車を降りて、その油の届かない場所に避難させ、立て掛ける。

「うん。やっぱり原油だね。珍しい」

 北寺が目を丸くしてそう言って、指で触れている。