輝きだした朝日、青い影を濃くする雲と山を背に、涼しい風と共に走り抜ける。田舎道はところどころ舗装がされていなかった。それでもこの高級マウンテンバイクは抵抗を最小限にとどめてくれ、まるで自分の肉体の延長のようにスムーズに車輪を動かすことができた。

 冷たい空気を、鳥の鳴く声が震わせる。遠く、雁の群れが横に広がるように連なって飛んでいた。

 あの鳥とともに移動している。

 彼らは空を、私達は地を。

「ふうー!」

 律歌の声にちらと振り返った北寺が、口端をにっと上げる。そうして二人連なって草原を走り続ける。風が体の中を通って抜けていった。


 どれくらい走っただろう。

「りっかー!」

 自分の呼吸と呼吸の間、かすかに声が聞こえた。額を伝う汗が前髪を張り付ける。北寺が米粒のように、はるか前方の遠くに見えた。

 もう……足に力が入らない。

 北寺は片足をついて、こちらを振り返りながら待っている。徐々に差が開いていき、ついにはここまで離されてしまった。

(なんなの……あの……遠さ……)

 嫌気がぶあっと襲ってくる。