7月の上旬。僕は強い雨が降る中を傘を差して歩いていた。歩く度に雨が跳ね、僕の服を僅かに濡らした。

僕は、千晴の家に向かって歩いていた。遡ること2日前――。



「深冬!」

いつも通りの教室で僕が机に突っ伏していると、隣のクラスの千晴が僕に声をかけて来た。

「どうしたの?」

「日曜日、一緒に遊ばない?」

「良いけど…日曜日って雨じゃない?」

僕は、どんよりと暗い空を見上げて呟いた。

「…良いじゃん。その日、話したいことがあるし」

割と真剣な顔になった千晴に、僕は深いため息をつく。

「分かったよ…遊ぼうか。僕が千晴の家に行くから」



僕は、千晴の家につくとインターホンを鳴らした。少し雨が収まったような気がする。

「はーい」

千晴の家のドアが開き、千晴が出てきた。僕は「こんにちは」と微笑む。千晴も「こんにちは」と微笑み返してくれた。

「上がってよ!」

千晴に促され、僕は千晴の家に上がった。部屋に入ると、先客が居たようで寝転がっていた彼は僕を見た。

「美影…来てたんだ」

美影は、悲しそうに「うん」とうなずく。僕は、その様子に違和感を感じる。

「……あぁ。そっか…もうすぐか……」

僕は、美影を心配そうに見つめた。もうすぐで英太の命日が来るのだ。

「…うん」

美影は、とても暗そうに返事をするだけだ。僕は「美影も遊びに来たの?」と問いかける。それでも美影は「うん」としか返してくれない。

千晴は「とりあえず、座ってよ」と僕に座るように促した。