「深冬(みふゆ)!」

春休みに入り、もうすぐで僕はこの街から離れることになった。

そんなある日、呼び出し音が鳴る。僕が外に出てみると、懐かしい彼が立っていた。

「美影(みかげ)!」

僕の幼なじみで親友の近藤(こんどう) 美影が立っていたのだ。美影の首には、黒い紐がかけられている。僕があげた「とある首飾り」だろう。

「久しぶり。美影、里帰り?」

僕が美影に問いかけると、美影はゆっくりとうなずいた。そして、服の中からペンダントを取り出した。円形をした赤い飾りが美しい光を放っている。

「これ、割れてしまったんだ…」

美影は飾りを手に取り、僕に見せてくれた。飾りが少し欠けている。僕は「本当だ…直すから上がってよ。ゆっくりと話もしたいし」と美影に家に入るように促した。

僕は、霊を見たり、霊を払ったり…時には霊を呼んだりする力を持っている。それは、僕の両親と美影、もう1人の幼なじみだけが知っていることだった。

美影は、小さい頃から霊に憑かれやすかった。なので、僕がこの首飾りをあげたのだ。この首飾りは、霊に憑かれても体を軽くする力を持っている。

「分かっ…た…」

突然、美影の体が崩れ落ちた。僕は「美影?」と寄りかかる。美影は、とても苦しそうにしていた。

とりあえず、僕の部屋に運んで飾りを直さないと…!

僕は、美影を抱え上げた。僕の視界に黒ずんだ飾りが見える。霊が美影に憑いてる証拠だ。そっと片手で印を結ぶ。

「天地を縛り付ける者よ。今、我の前に姿を現せ」

僕が呟くと、美影の中から黒いモヤが現れた。人に憑く霊を中から出すのも僕の力だ。

すぐさま印を結んでいた手を解き、霊力を込めた御札を貼り付ける。霊は御札とともに散っていった。

美影の様子を見てみると、美影は穏やかな顔で眠っている。安堵のため息をついた僕は、美影を僕の部屋に運んで布団に寝かせると、そっと首飾りを外す。直すまでの間、霊が寄り付かないように結界を張った。