あ、今日もいる。
私の好きな人。



名前は分からないけど。
ネクタイの色でひとつ上の先輩だってことしか知らないけど。



毎朝、レッスン室から見えるテニスコートのベンチに座ってる先輩に私はいつの間にか、恋をしていた。



一方的な恋で、叶わない恋。



先輩は、私のことなんて認識してないでしょ。
だって、身体はこっちを向いているのに、1度もこっちに目を向けてくれたことはない。



レッスン室を借りて、部屋に入って、ピアノの準備をしながらセンパイを盗み見て。
そのあとは、ピアノと向き合って。
チャイムがなって、窓の向こうを見た時にはもういない。



毎日、朝の数分だけ。
学科が違うから、昼間に廊下で会うこともない。



はぁ、なんでこんな悲しい恋しちゃったんだろう。