「お姉ちゃん!」


病院に寄っているうちに家に着く頃には普段学校が終わる時間になっていた。


妹の花那が私を出迎える。


私の何よりも大切で、大事な妹。


私は自然と痛む足を何ともない様に振る舞い、隠した。


「聞いてっ、お姉ちゃん!今日ね、告白されたの!」


顔を赤らめて、満面の笑みでそう言う花那。


天真爛漫で、表情がコロコロ変わって、いつも愛らしい。


私とは対照的な、妹。


いったいいつからだろう。


私が、美月を演じるようになったのは。


花那のことが大切で、花那がいるから私は良い姉で在り続けられた。


私が存在出来るのは、花那がいるから。


演じることに慣れ。


嘘を吐くことに慣れ。


気が付けば本心なんて、自分でさえも見失って。


それなのに。


熱く激しいあの視線に貫かれ。


あの瞬間、私は『美月』を演じることが出来なかった。


私はあのとき、どんな表情を晒していたのか。