私はとても優しくない女の子でした。


何度目かと思うくらいあっさり
別れを切り出されてしまうのです。

私はなにがダメなのかどこがダメなのか全く
わからなかったのです。

19の夏
私は彼に出会いました。

なにをするにも柔らかく
私を呼ぶ声も柔らかく繊細で
それはそれは振り向くにも繊細を問うほど

人の痛みを全て知っているかのように
彼はわたしを毎日食事に誘った。
どこを見て食べればいいのか…

出会って1日で連絡を交換してしまった。
その日から毎晩電話をするようになった。

驚くほど優しかった



夏の暑い暑い日 初めて彼の家に行った
映画をみた。

どこにでもある恋愛映画だ
どこにでもある恋愛映画だからこそ、
このなんとなくの関係の2人が見るには
とても酸っぱいものだった。

果てしなく気まずい

私は狙っていたのだろうか、本能がそうしたのだろうか、
彼の匂いに負けたのだろうか。
彼にいけない代わりに彼の匂いのつくものにすりよったのだろうか。
彼のベッドに横になる。
最初は遠くに座っていた彼が、私の横にもぐりこむ

近いなぁと思いながら見ていると
すぐに密着していた
嫌な気持ちもしない

離れると同時に


……すき
と一声聞こえた。




私のゲレンデが溶けてしまう音がした

口の中まであつい

頭も鼻も口も全てが繋がっているように思える瞬間が、この世で初めて行なわれたのかと


私は笑って
え?笑
と言った

私の慣れない声に彼はどう反応しただろうか


彼はいつも繊細で綺麗でまっすぐだ

その時も。



私はその瞬間

自由な彼に恋をした。