ケータイ小説 野いちご

好きな気持ち

1■仕事に追われる毎日

仕事が忙しくてよかった

今までは絶対思わなかったようなことを 初めて思った。

毎日家と会社の往復。休日出勤なんて日常茶飯事。
もう無理だとたまに何もかも嫌になったときは早く会社を上がって、恋人である理玖に会いに行っていたけれど、それもなくなってしまった。


わたしが身を置く【株式会社サノセ】は幅広い分野に手を出し 一部上場もしている大企業なのだが、わたしのいる組織【 IT開発室】はITに関連する新規事業の立ち上げ──謂わば会社が出してくれる予算で売れるサービスを作るところで、今はまだ自分たちの組織では売り上げも立っていない赤字組織。

明日の今頃には今やっていることが全て無駄になっているかもしれない
1ヶ月かけて作った資料も事業計画も全部白紙に戻っているかもしれない
──そんな組織だ。


自ら異動願いを出して念願叶い新規事業にきたのはいいものの、言うことのコロコロ変わる上司に振り回されること、依頼されたことの期日が短いことがよくあるのでそれに伴い休日出勤も多い。
そんな調子で心身ともに疲れていた。

疲れ切ったわたしの癒しが理玖だったのに、皮肉だ。

彼を失った痛みを 仕事が癒してくれているんだから。
いや、癒してくれているというのには語弊がある。考える隙をなくさせてくれるというのが正しい。



「はぁ‥‥‥」

小さく息をこぼして、いつの間にかスリープモードになっていたPCのロックを解除した。

事業計画のエクセルも起案書のパワポも作らなきゃいけない。やることだけはたくさん。

忙しくてよかった と本日何度目になるかわからないため息をついて、ブラックコーヒーを口に含んだ

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