ケータイ小説 野いちご

好きな気持ち

2■思いがけない告白


今時こんなこと言う上司 いるんだ

そんなことを思ったが許してほしい。部長が「今日は無礼講だ」なんていうから少し笑いそうになったのだ。



栗田さんの歓迎会は、会場について初めて知ったのだけれど貸切だった。いつも歓迎会なんて部署の人だけなのに、今日は違う部の人もたくさんきている。
理由はわかる。多分人が密集している輪の中心にいる人目当てだ。

「篠田さん、本当にかっこいい〜」
「彼女いないんですか?」

栗田さんの歓迎会でしょ‥‥と思うような思わないような。まぁいいか と思いつつ栗田さんに目をやると、楽しそうに部長と話していた。


「篠田さん人気者ですね。わたし、栗田さん結構タイプかも」

ハイボールをゴクリと飲んでわたしに喋りかけたのは、隣に座る梨々香ちゃん。新卒でサノセに入って、わたしのように異動願いを出してIT開発室にきたのはわたしより一年あと。
年齢もわたしの一つ下で、会社では特に仲がいい。

「栗田さんね、大人だよね。いい感じに部長のことあしらってるし」
「あしらってるって!」

可愛く笑った梨々香ちゃんに、久々の癒しを感じる。マイナスイオン出てない?うっかりそんなことを口に出しそうになった。

「そういえば最近忙しくて二人で飲み行けてないのでお話聞く機会がなくて‥‥ 彼氏さんとはどうですか?」

小声で囁く彼女に優しさを感じる。興味本位というより心配そうな感じ‥‥。
多分だけれど 理玖と何かあったことは感じ取っているらしい。いつもだったらもっと楽しそうに聞いてくるから。

「あーうん 別れたよ。振られちゃった‥‥」
「!!えっ、」
「理玖、他の子と結婚するっぽい。てか、したのかな?三週間くらい前に別れたんだけど言えば良かったね」

梨々香ちゃんはもうなんと言っていいのかわからないと表情で伝えてきた。もともと大きな目がぐりっと開き、目力が強すぎて少し怖いくらいある。

「な、なんですかそれ‥‥あり得ない 最低」

小さく震えるのは怒りなのだろうか。目に涙をためて怒ってくれる彼女に、心が軽くなるような気がした。

わたしは 怒れなかったから。彼の左手の薬指に指輪がはまっていても、悲しくなるだけで怒りは出てこなかった。
でもそうやって梨々香ちゃんが怒ってくれたことで少しだけ救われた気がする。

「ありがとうね、梨々香ちゃん」

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