それから数日が立ち、月のものが終わった朧は長女の如月から届いた文を読んでいた。

この姉は気性が荒く手がつけられない所があるが、末妹の朧にはとても優しい。

それに如月夫婦にはまだ子が居らず、会えばまるで我が子のように可愛がってくれる。

朧にとってとても優しい姉だが――氷雨にとっては違う。


「ああ…返事来たのか…来ていいって?」


「はい、今すぐ来なさいって」


「あああ…これで俺の死亡決定…」


如月が幼い頃から執着されて引っ張り回されてきて、さらにそれが原因で幼いうちに嫁に出してしまったという後ろめたい思いのある氷雨は、祝言の時久々に如月と会ってその恐ろしさを再体験していた。


「私がお師匠様を守ってあげますから大丈夫ですよ」


「おう…絶対絶対守ってくれよな…」


まるで立場が逆転してしまい、温石の入っていない炬燵に入って両手で顔を覆って恐ろしさに耐えている氷雨の隣に潜り込んだ朧は、背中からぎゅっと抱き着いて頬ずりをした。


「でもお師匠様を如月姉様に取られなくて良かった」


「怖いこと言うなよな!そりゃ小さい頃は可愛がったけどあいつ暴力ばっか振るうわ暴言吐くわで悪夢でしかねえよ…」


「ふふふ…如月姉様の愛情表現は屈折してますからね」


「いやほんと俺を守ってくれよ!?約束だからな!?」


何度も念を押してくる氷雨にずっと笑っていると、体勢を変えて向き合った氷雨は朧の腹を撫でて抱き寄せた。


「もう痛くないか?」


「はいおかげさまで。また可愛がって下さいね」


「煽るなよな…。俺まだちょっと仕事が残ってて…」


「ちょっと位いいじゃないですか。ね?」


朧の誘惑に抗うつもりのない氷雨は、朧の耳たぶを齧って久々のご褒美にありついた。